【読書】木村元彦『社長・溝畑宏の天国と地獄〜大分トリニータの15年』

日韓ワールドカップのために1994年に実質ゼロから創設された大分トリニータ
ワールドカップの誘致に成功し、チームは地方の資金力の乏しいクラブでスポンサー探しに奔走しながらチーム創設わずか15年の2008年のナビスコカップで「日本一」に輝いた。その成功物語は、サッカーによる地域活性化の模範例として語られていた。

2009年末、チームの2部降格と資金ショートが問題となるまでは。

その大分トリニータのチーム創設から現在までを、私財も家族も投げ打って大分トリニータに尽くした前社長・溝畑宏(現観光庁長官)のサクセス・ストーリーと挫折を中心に、スポンサー、地元の人々、選手、フロントなどから語ったのが本書である。

著者は『オシムの言葉』でお馴染み、木村元彦氏。
情緒的かつ主観的な部分は若干鼻につく人もいるかもしれないが、「読ませる」ということでは申し分ないライターだ。

感想は一言。「すごい本を読んだ」。年に数回あるかないかの衝撃を受けた。
確かに物語は現代のプロジェクトXといえなくもない。しかし、プロジェクトXにない黒さ、血みどろさは、引き付けられるようであった。

僕が印象的だったのは、終章の同じ地元、由布院温泉の町おこしになぞらえた部分。サッカーとは関係ないが、引用させていただく。

由布院の町づくりは中谷健太郎さん(亀の井別荘総支配人、地方生活圏研究所代表)、溝口薫平さん(由布院 玉の湯会長、由布院商工会会長)が二人三脚で行って大きな成功を収めた。中谷さんはムラの秩序を超えて、新たな構想を描き、実現した『改革者』で、溝口さんはムラの論理をわきまえて改革と秩序の間を結んだ『調整者』。溝畑さんにはもうひとり、溝口さんのような人が必要だった。」

「改革者」と「調整者」の必要性。
地域活性化も、あらゆる組織の改革も同じだと、痛感させられた。

とにかく、Jリーグに関心を持つすべての人は必読。

(僕のような)「地域活性化」に関心をもつ人も必読。

とにかく文句なしにオススメ。ぜひ読んでみてください。損はさせません。

内容とは関係ないけど、溝畑氏に入省を勧めた自治官僚たちが実名で出てくるのも業界人的にはツボでした。

(おまけ)しかし、先週の金曜日「あの」八重洲ブックセンターに行ったら、「大量の取り置きが入っていて在庫がない」って言われた。あの「大量の取り置き」はなんだったんだろう??

社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年

社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年