小池清彦・加茂市長が熱い件について

世間では竹原・阿久根市長が世間を騒がせているが、全国に783も市があれば「熱い」市長は他にもいる。
今日はその中の一人、新潟県加茂市小池清彦氏を取り上げてみたい。

加茂市新潟県の中央部に位置しており、人口は約3万人。そんな目立たない市の中でも、小池清彦市長の個性は異彩を放っている。
小池清彦・加茂市長は1995年に市長に就任し、現在4期目。東大法学部出身の元防衛庁キャリア官僚で、防衛庁時代には教育訓練局長を勤めている。
もちろん言うまでもないが、「トンデモ度」でいえば竹原・阿久根市長には遠く及ばない。しかし、その信念の熱さには感動すら覚える。
まず、何と言ってもホームページが熱い。トップページは以下をご覧いただきたいが、自治体のホームページによくある生活情報とかは全くなく、ひたすら「厳重抗議」だの「抗議声明」だのが並ぶ。何も知らない人が見たら、どこの政治団体かと思うのではないか。自治体のホームページでは、もちろん他に類を見ないだろう。

http://www.city.kamo.lg.jp/

主張の内容ももちろん熱い。
まずは市町村合併について。
氏は市町村合併の強烈な反対論者であり、市町村合併は「国を滅ぼす」と強硬に主張している。
その主張には傾聴すべき点もまったくないわけではないし、当時の総理大臣と全国町村会長の地元の地名をとって「横須賀方式対添田方式」と名付けるなど、ユニークな点もあるのだが(全文は下記をご覧いただきたい)、市の広報誌である「広報かも」別冊で自説を展開するというのは何とも。

「国を亡ぼし、地方を亡ぼす 市町村合併に反対する。加茂市が県央東部合併に加わらない理由」(加茂市HP)
http://www.city.kamo.lg.jp/section/oshiraseban/shisei/shichousongappeihantai1210.pdf

しかも、市のお金で当時合併が議論されていたお隣の、田上町全戸に「市町村合併について反対するちらし」を公費で配布してしまったのである。当然、住民監査請求があったが、監査委員会は「措置の必要は認められない」という結論。裁判になったら、適法じゃないと思うのだが…

次に道州制について。
自民党政権時代、道州制について随分議論がされたが、小池市長は強硬な反対論者として知られており、「全体主義ファッショ道州制」と評している(これは当時Wikipediaでも紹介されていた)。各種団体の非公開の会合でも、印象的な発言を何度となくしており、筆者も傍聴したことがあるが、強烈としかいいようがないものであった。非公開の会議なので、ここに書けないのが残念である。

さらに、小池市長の主張は内政にとどまらない。
元防衛官僚としての信念からか?イラク派兵に強硬に反対しており、市のホームページにも、いくつもの「要望書」「意見書」が公表されている。
もちろん一個人として、一政治家として意見を持つことは否定はしないが、なぜ市政と全く関係ないこれらの「要望書」「意見書」を市のHPに掲載するのかは何ともいえない。

我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る―防衛省元幹部3人の志

我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る―防衛省元幹部3人の志

それでも、小池清彦・加茂市長の強烈な個性は伝わらないと思っていたところ、加茂市政を研究する論文が最近発表された。

箕輪允智「非開発志向の自治(上)―加茂市政構造分析から見た「開発」と「分配」―」『自治総研』2009年10月号(第372号)
http://www1.ubc.ne.jp/~jichisoken/publication/monthly/JILGO/2009/10/mminowa0910.pdf

箕輪允智「非開発志向の自治(下)―加茂市政構造分析から見た「開発」と「分配」―」『自治総研』2009年12月号(第374号)
http://www1.ubc.ne.jp/~jichisoken/publication/monthly/JILGO/2009/12/mminowa0912.pdf

ここまで読んで小池市長に興味を持った方はもちろん、大都市ではなく、一地方都市を深く掘り下げた研究としては貴重なものであり、論文全文を上記PDFファイルで読むことができるので、是非一読をお勧めしたい。

なお、小池市長は、衆議院議員国民新党党首の亀井静香氏(内閣府特命担当大臣(金融担当)・郵政改革担当)と東大法学部時代の同級生であり、微妙に「お友達人事」の香りがするものの、2009年10月28日、日本郵政社外取締役に就任した(市内には新しく郵便局ができたらしい)。今後も目が離せない。