「シリーズ「縮小ニッポン」〜第1回・都市間の人口争奪戦」を観る

年により若干の増減があるとはいえ、わが国が「人口減少時代」を迎えたことにより、首都圏への人口流入は鈍化している一方で、首都圏の市区町村ごとの人口増減にはバラツキがあり、いわば限りある住民を、自治体同士が「奪い合う」状況に突入していると言われて久しい。
統計局ホームページ/人口推計/人口推計(平成21年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐

昨日のNHKの朝7時からのニュース番組「おはよう日本」では、「シリーズ「縮小ニッポン」〜第1回・都市間の人口争奪戦」と銘打って小特集を組み、この首都圏の人口の住民の「奪い合い」を、人口減少に直面し、その状況を打開するためにプロジェクトチームを組んで定住促進を図る横須賀市と、人口増加のための施策を打っている流山市を対比させて紹介しており、非常に興味深かった。

いずれの自治体でも、ターゲットは若いファミリー世帯。住民税収が見込めるというのがその大きな理由とのこと。特に流山市では、DEWKSを戦略的にターゲットとしているようである。横須賀市流山市とも地方交付税の交付団体なので、現状の地方財政制度を前提とすれば留保財源を除けば地方税の増加は財政収入と直接的にはそう大きくリンクしないのだが、将来的な地方への本格的な税源移譲や国の地方交付税の削減を念頭においているのだろう。

横須賀市では、ここ数年の人口移動パターンから、京急沿線の横浜市域を移住のターゲットとして設定。積極的な支援策とPRを行っている。

流山市では、共働き夫婦を対象に駅から保育所へのバスでの送迎を実施。また、都市緑化にも力を入れ、現在の子どもが大人になった時に住み続けたくなるようなまちづくりを目指す。

流山市の施策は興味深いのでHPで施策の紹介をしようと思って探したけど、流山市のサイトって結構不親切であまり情報が出てこない。もしかしたら他の自治体にマネされないように、わざとわかりにくくしているのかもしれない。単に情報化が進んでないだけかもしれないけど。

担当の記者さんも、blogで記事を書いているので、併せて参照されたい。

http://www.nhk.or.jp/asupro-blog/090/49469.html

個人的にも、人口減少社会と地域政策を研究しているのだが、その視点から気になったのは2点。

1点目は、流山市の人口増は2005年のつくばエクスプレス開業によるところも大きいと思われるので、既存の路線での人口獲得に成功している取り組みを観察してみたいということ。

2点目は、この分野の第一人者である日本政策投資銀行の藻谷浩介先生は、首都圏の自治体間の人口格差について、通勤距離そのものよりも、地権者が設定する価格が、通勤距離に比して「値ごろ」感があるかどうかが人口増減を規定していると、著書『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社,2007年)で述べており、この説と、首都圏の人口の「奪い合い」との関係についても、気になったことである。

いずれにせよ、このシリーズ、続編があるようなので、今後の展開が楽しみである。

実測!ニッポンの地域力

実測!ニッポンの地域力