【事業仕分け】傍聴しました。

金曜日は会社を休んで、事業仕分けを傍聴してました。
このセッション(21日午後のセッションB)は自分の会社と関係のある団体が多かったので。
といっても会場じゃなくてネット中継ですけどね。
でもネット中継は第1弾と異なり、民間5社がある意味会社の名誉をかけてやってるだけに、非常に快適。
別ウィンドウでPDF化された資料を見ながら視聴できるので、ある意味実際に会場で傍聴するより非常に見やすいかも。

注目は、
(1)(財)日本宝くじ協会(言わずと知れた元締め。我が社も少額ですが助成を受けています。)
(2)(財)全国市町村振興協会(間接的にですが、我が社との関係がないわけではない団体。アカデミーも元はここが運営してました)
(3)(財)自治総合センター(直接関係はないけど、知事会とは縁が深いようです。振興協会と同じでお金持ってます)
(4)(財)全国市町村研修財団(市町村アカデミー、国際アカデミーを運営するために最近急遽作られた財団)
(5)(財)自治体国際化協会橋下知事、石原知事の批判で有名になりましたが、我が社も海外調査では随分お世話になっています。)
あたり。

上記団体だけではなく、この午後のセッションの9団体全体を通じてショックだったのは、仕分けされる団体の代表者のプレゼンや質疑応答が下手すぎたこと(霞ヶ関の役人はプレゼンが下手というのは第1弾でも言われていたことですが…)。
天下り(や現役出向)というのは、団体の「格」と職位によって、どの程度偉い(くなった)人がいくかどうかが厳密に決まっています。
なので、「格」の低い団体であったり、重要でないポストの人が説明していれば、「役人として残念だったのね」でまだ納得できるのですが、説明していたのは、ほとんどが事務次官経験者かそれに近いクラス。
それなのに、いかにも小役人・悪人というような風体だったり、空気が読めなかったり。

仕事柄、元役人でも偉くなった人というのは、見識や威厳やコミュニケーション能力の高さなど、「さすが」と思わされることが多々あります。いわゆる霞ヶ関のキャリアと呼ばれる人々は、大学卒業時点で優秀であっただけではなく、財務省であったり、国会議員であったり、地方自治体の勤務であったり、そうした勤務での数々の折衝の経験から、プレゼンテーション能力はもちろんのこと、コミュニケーション能力も非常に高いはずです。それが、退職して衰えたのか、霞ヶ関の人材の質が劣化しているのかわかりませんが、ちょっとひどかったです(もちろん僕がプレゼン上手ってわけじゃないので、天に唾することは承知の上ですが)。これでは国民の目から見て給与に見合っていないという批判を受けても、文句は言えないという印象を与えてしまったのではないかと思います。

で、宝くじ関係団体の(1)〜(3)は1つのセッションだったのですが、
報道の通り、仕分け結果は、
高額な役員給与、高価なオフィス、複雑な資金の流れは、宝くじの収益金の使い方としては不適切。
上記事業は廃止すべきであり、発行者の地方自治体、当せん金を得る購入者のために、こうした問題がクリアーされるまでは、総務大臣は宝くじを認可すべきではないという非常に厳しい結論でした。

進行役の寺田議員が宝くじの普及宣伝事業として助成を受けた関連団体の報告書やDVD(衛星電話番号簿、村の写真集など)を取り出しはじめたときは、ウチの会社の報告書が出てこないかと思ってヒヤヒヤしました。

(4)(財)全国市町村研修財団については、
基金、施設のあり方を研修全体のあり方で効率化するよう行政指導すべき。
・地方六団体自体、天下り団体であり、自立した団体とはいえないのでそのあり方を検討すべき。
という結論でした。
この財団(平成20年設立)、設立の詳しい経緯はわからないのですが、公益法人等改革への対応として、全国市町村振興協会の運営ではなく、宝くじのお金も入ってるけど、自立した財団として基金を運営するつもりだったと思うのですが、その基金が800億円(元は宝くじマネーですが)あったのが「埋蔵金」とみなされて裏目に出た感じです。
また、豪華な施設と稼働率の悪さ(4割程度)も批判の対象でした。

地方六団体のあり方は、僕はまだソースを確認していないのですが、一部報道では、天下りをやめることを原口総務大臣が約束することを条件に事業仕分けから外れたようなので、天下りの廃止は規定路線なのでしょう。
僕の意見は既に書いた通りですが、同僚によるとオランダでは地方を代表する団体の事務方の長のポストには与党の一線を退いた政治家がついているらしいので、こういうときには、国際的な視座が重要になるのではないでしょうか。

(5)(財)自治体国際化協会(CLAIR)については、
国からお金が出ているわけでも、宝くじの発行権限があるわけではないので、総務省に対して行政指導を行うべきという要請というのを前提に、
・地方の総意に基づき行っていると言われる事業については、このような「地方の総意」の再検討を行う
・対象事業の見直しを行う
地方自治体の負担のあり方を見直す
という結論でした。
正直CLAIRは厳しいと思っていたので意外な結論でしたが、国のお金が全く入っていないことから、首の皮一枚つながったというところでしょうか。
4月に理事長が学識者になっただけではなく、7つの海外事務所長すべてが総務省のキャリアの天下り(もしくは現役出向)であったのが、7月からニューヨーク事務所長が自治体職員になるらしいですし、今後もいろいろ「改革」をして組織の生き残りを図っていくと思われます。
ただし、都道府県、政令指定都市の負担金で成り立っているCLAIRは、今後も橋下知事や石原知事のような「強硬派」がいることから、「地方の総意」への理解と負担金の面で、そのあり方が厳しく問われるのは間違いないでしょう。

【事業仕分け】第2弾(後半)の対象公益法人等が確定

◇仕分け対象の公益法人特別民間法人

内閣府所管(1法人2事業)     
全国交通安全母の会連合会

総務省(12法人20事業)       
日本宝くじ協会自治総合センター全国市町村振興協会地域活性化センター、地域総合整備財団、全国市町村研修財団自治体国際化協会自治体衛星通信機構地域創造日本消防設備安全センター日本防火協会日本消防検定協会

法務省(3法人4事業)       
司法協会、日本語教育振興協会矯正協会

■外務省(3法人4事業)       
国際開発高等教育機構国際協力推進協会日本国際協力センター

財務省(1法人1事業)       
塩事業センター

文部科学省(1法人1事業)     
民間放送教育協会

厚生労働省(7法人9事業)     
雇用振興協会、女性労働協会、全国生活衛生営業指導センター、日本ILO協会、理容師美容師試験研修センター労災保険情報センター、中央労働災害防止協会

農林水産省(5法人5事業)     
全国農林統計協会連合会、日本森林林業振興会日本森林技術協会、農村環境整備センター、林道安全協会

経済産業省(9法人11事業)     
JKA、大阪科学技術センター、省エネルギーセンター、新エネルギー財団、電気工事技術講習センター、日本エネルギー経済研究所、日本立地センター、日本原子力文化振興財団、日本電気計器検定所

国土交通省(24法人20事業)     
運輸政策研究機構、海外運輸協力協会、河川環境管理財団、関東建設弘済会、東北建設協会、中部建設協会、北陸建設弘済会、近畿建設協会、中国建設弘済会、四国建設弘済会、九州建設弘済会港湾空港建設技術サービスセンター空港環境整備協会、建設業技術者センター、全国建設研修センター、航空医学研究センター、航空輸送技術研究センター、浄化槽設備士センター、全日本トラック協会道路保全技術センター日本建設情報総合センター、雪センター、リバーフロント整備センター、ダム水源地環境整備センター

環境省(2法人3事業)       
日本環境協会日本の水をきれいにする会

防衛省(1法人1事業)       
防衛施設周辺整備協会

警察庁(1法人1事業)       
全日本交通安全協会

毎日新聞 2010年5月18日

先日一部報道のあった地方六団体は入らず。

注目は総務省所管の宝くじを財源としている公益法人か。宝くじの収益については、下記記事がよくまとまっている。筋論からいえば天下り法人を通さず直接自治体の取り分とするか、当せん金を比率を上げるかだが…

【日本の議論】宝くじは儲けすぎ? 天下り法人に“埋蔵金”も(産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091220/crm0912201801004-n1.htm

「集団移住」の事例を学ぶ論文

原田晃樹/金井利之「看取り責任の自治(上)−滋賀県余呉町の居住移転施策を中心に−」『自治総研』2010年4月号(第378号)
http://www1.ubc.ne.jp/~jichisoken/publication/monthly/JILGO/2010/04/harada_kanai1004.pdf

近年のわが国全体の人口減少、高齢化は、これまでも一部の過疎地域で問題となっていた限界集落(過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になった集落。大野晃教授が提唱)の問題を一段と深刻化させている。将来的には、社会的なサービスが供給されず、移動可能な者だけが移動し、「社会的弱者」だけが移住できずに残ってしまう集落も出てきてしまうことが懸念されている。

こうした問題の解決策として、「集団移住」ということは安易に言われがちであるが、当たり前のことではあるが、集団移住は地域住民と行政のギリギリの判断で行われるものであり、簡単なものではない(もちろん、こうした集団移住自体は地域固有の文化を奪うというとしてその是非を問う議論もあるが、それは別に論じることとしたい)。
そのような中、この論文で紹介されている、昭和の大合併を契機として、薪炭産業の衰退を契機として一部地域の集団移住を実施した旧余呉町の事例は、今の時代において貴重なヒントを与えてくれるものと思われる。後編では、その後の旧余呉町のダム事業の頓挫、「平成の大合併の難航」などの経緯が語られることとなっており、大いに期待したい。もちろん、こうした状況に直面している関係者や関心のある方は、上記PDFファイルから全文を読むことができるので、一読をお勧めしたい。

なお、共著者の一人の金井利之東大教授は、地域社会の生き残り策としての「地域活性化」について、成功する地域もあれば失敗する地域が必ず生じるものであり、失敗した地域はより厳しい状況に追い込まれることから、こうした条件の厳しい地域では、行政は一発逆転の「地域活性化」に手を出すのではなく、地域空間における長期的な縮小と撤退の「殿」をつとめるべきであるとしている。もちろん、金井教授がいうような「派手な」地域活性化はすべきではないし、行政は「殿」をつとめるべきではあるという意見にも同意するが、厳しい地域でも「希望」がなければ住民の同意を得るのは難しい部分もあり、そこをどうするかが課題であると考えている。まだ自分の中で結論がでているわけではないが…

というわけで、この問題については、今後も考えていきたい。

「クラウドコンピューティング」と僕の学生時代

今流行りの?クラウドコンピューティング
実は、何がすごいのか、いまだによくわからない。
もちろん概念はよくわかるのだが、何がわからないって、何が新しいのかである。

Wikipedia

従来のコンピュータ利用は、ユーザー(企業、個人など)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自分自身で保有・管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは「ユーザーはインターネットの向こう側からサービスを受け、サービス利用料金を払う」形になる。

ユーザーが用意すべきものは最低限の接続環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くブラウザ、インターネット接続環境など)のみであり、加えてクラウドサービス利用料金を支払う。実際に処理が実行されるコンピュータおよびコンピュータ間のネットワークは、サービスを提供する企業側に設置されており、それらのコンピュータ本体およびネットワークの購入・管理運営費用や蓄積されるデータの管理の手間は軽減される。

僕は学生時代に社会調査データの統計解析をしていたのだが、
それが1996〜2001年くらい。
そのときも研究室のMacから大学の中央計算機(UNIX環境)にリモートアクセスして、プログラムを動かしていた。
理系大学だったので、当時から一人一台の環境ではあったが、研究室に入ったばかりの頃は下っ端なので、スペックのしょぼい端末しか与えられなかった(笑)。
当時はiMacはおろか、Powermacの前、確か↓この機種だった気がする。
http://www.mac-rescue.net/spec/1994/lc630.html

そうするとどうなるか。
そう、とにかくソフトが動かないのだ。
Wordなんて重いソフトは当然動かないので、ワープロは「Wordperfect」っていうマックの専用ソフト。
Excelは当時4.0(今の2007はver.12)。当時は1つのファイルに1つのワークシートしかなかったんですよ!
(ちなみに、Excelって、Windowsの前、マイクロソフトの主力がMS-DOSだった時にマックのために開発されたソフトなんですよ。知ってました?)

※余談ですが、インターネットとメールはその頃からちゃんとした環境でした。当時はサイト自体が少なかったけどね。

というわけで、文字を打ったりするのはテキストエディタ
だからその頃の統計解析はこんな感じ。

PCからASKIIコードで入力した調査データを学内ネットワークで中央計算機に送る。
       ↓
PC上で集計したいプログラムをSAS(Statistical Analysis System)のコマンド形式で書く
       ↓
書いたプログラムを学内ネットワークで中央計算機に送る
       ↓
UNIXコマンドで送ったSASプログラムを実行するよう命令する
       ↓
中央計算機にインストールされているSASがプログラムを実行する。
       ↓
中央計算機に集計結果のファイル(テキスト形式)が出力される
       ↓
中央計算機にある出力を学内ネットワークでPCにダウンロードする
       ↓
結果を見る

という、非常に面倒なことをしていたわけです。
もっとも、学生時代の後半は就職した先輩が自分のサーバでSASをインストールしてくださっていたので、自宅からインターネット経由で上記プロセスができるようになり、便利ではあったのですが。

それが、僕が就職した頃からPCのスペックが上がるにつれて、統計解析もPC上のSPSSで行うことが多くなっていきました。
SPSSはメニューバーから統計解析のメニューが選べるので、革命的に楽になったのです。
確かにSPSSは昔からあったけど、90年代のSPSSは一つの分析に1時間くらいかかることもあったのです。
それが、PCのスペック向上で瞬時にできるようになったわけです。

こういう経験をしていると、「クラウド」という、ネットの「向こう側」でアプリケーションを動かすなんて、今さらかと思ってしまう。
確かに、コストダウンとか、高度な処理とかあるのかもしれない。
でもコストだって、大学の中央計算機も大学が払ってくれてただけで、結構なお値段はしていたはず。
そう考えると、コストダウンっていうのも、商売上の口上なのでは?とつい疑ってしまうし、「革命的な変化!」とかいわれると、「そんな大したものかよ!」って懐疑的になってしまう。

なので、具体的な事例を見るまでは、何とも言えないです。

「地方都市で働く」ということ

最近、東京の某民間シンクタンクに勤める後輩が、東京から松本に引っ越した。

奥さんが松本の大学病院に勤務しているとかで、押し切られたらしい(笑)。

会社には週2回くらい行って、あとは自宅で仕事をしているようだ。
もっとも、そのことはクライアントには内緒らしいが・・・

新宿から2時間半はしんどいとはいっていたが、まんざらでもなさそうだ。
もっとも、その後輩は免許を持っていないので、日常生活に支障がないかは謎なのだが・・・

その後輩の同期は、昨年、東京の某大手派遣会社を辞め、鳥取のITベンチャー企業に転職した。前職ではIT技術者の派遣をやっていたので連続性はあるようだが、鳥取と東京を行ったり来たりの生活を送っている。

別の友人にもフリーの翻訳者/編集者/ライター(名刺には「クリエイティブプランナー」って書いてある)がいて、彼も広島在住で自宅をメインに仕事をしているが、「仕事をする分には全く支障はない」と言っていた。
(もっとも最近は東京に居ずっぱりのようだが…)

彼らの仕事は情報や人脈が必要な仕事であるのはいうまでもないが、
ITの普及により、ある程度の都市であれば、「情報」の面での差はなくなった。
業種にもよるが、どこにいても仕事ができるようになったのではないか。
そして今後も、こうしたSOHO的なスタイルで働く人は増えるものと思われる。
現にアメリカは、ホワイトカラーの自営業の割合はかなり大きいと聞いているし、日本も近い将来そうなるものと考えられる。

地方都市のメリットは何か。
これはやっぱり圧倒的に「住みやすさ」だろう。
首都圏に比べれば同じ値段で圧倒的に広い家に住めるし、通勤も楽(自宅勤務ならしなくていいし)。
食べ物も安くておいしいものが食べられるし、物価自体が安い。

地方都市のデメリットとして、よくクルマ依存の問題が挙げられるが、
これも東京大学大西隆教授(国土計画・都市計画)によれば、
電気自動車による環境負荷の低減や、
将来的にはテクノロジーの発達による自動運転などにより、
解決できるのではないかとされている。

って長々と書いてきたが、賢明な読者はおわかりだろう。
そう、単に僕が羨ましいだけなのだ(笑)。
僕が育った静岡は東京から1時間。なのに空気も水も魚も美味しい。富士山も毎日見える。
住んでたのは割と市街地だったので、生活圏は全部自転車だった。
つまんねー会議とか打ち合わせをなくせば、今僕がやってる仕事はSOHOでも絶対できる。
会社の書庫にある資料は仕事に不可欠だけど、これは近い将来kindleiPadが解決してくれるはずだ。

でもこういう働き方が増えると、暮らしはもっと快適になる。それに地方都市だって元気になるはず。
ならまずはお前がやれよって話だけど、ウチのような官公庁系が一番堅いんだよなあ…こういうのって、本来はパブリック・セクターが率先してやるべきだと思うけど。

特に総務省は地方活性化とICTを所管してるんだから、真っ先にやるべきだと思うのだが。

EUと日本の地域政策

最近、EUの地域政策に興味を持っている。

欧州連合EU)の構造政策(地域政策)(外務省サイト)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/kouzou_s.html

というのも、EU加盟国の地域(州)や都市を単位とした政策についての文献をいくつかみていると、
EUの「構造基金」より補助金を得たという記述が結構みられるのである。

「構造基金」自体は、

>域内地域間の経済的社会的不均衡の是正・拡大予防を行う」ことを目的として
(同サイト)

いるそうだが、
この中の、「URBAN II」というプログラムがよく出てくる。
応募主体自体は国単位であるが、プログラムの策定等は、どうも当該都市(地域)がプランニングしているようなのである。
そしてこの補助金は、非常に「競争的補助金」の性格を強く持っているようである。

つまり100億円あったら、応募のあった見込みのありそうな都市(地域)10箇所に10億円ずつ配分するようなものである。

これ、一見合理的に見えるが、日本社会の風土には合わない部分もある。
100億円あるなら、日本なら約2億円を全都道府県に配分するのではないだろうか。

日本社会は「公平性」を重んじる社会で、市町村ごとに介護保険の値段が違うのも、望ましくないとする主張があり(中井清美介護保険地域格差を考える』(岩波書店、2003年))、その主張は、一般的にも受け入れられているのではないか。

全国の地域別介護保険料額と給付水準を公表します(厚生省サイト)
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp040531-1.html

しかしながら、現在の国の流れはEUをモデルとしており、近年、地域からのいわば「コンペ方式」的な補助金が色々見られる。

国土交通省の「まちづくり交付金」や「中心市街地活性化基本計画」、ちょっと古いし、構造改革特区の影で目立たなかったが、「地域再生計画」は、そういった「コンペ方式」的な性格をもつ事例といえるだろう。

まちづくり交付金
http://www.mlit.go.jp/crd/machi/tosihsoshitsu/matikou.html

認定された地域再生計画の例
http://www.wagamachigenki.jp/saisei/04.htm

中心市街地活性化本部
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/chukatu/

この背景には、やはり国・地方合わせた債務残高が800兆円を越える中、田中角栄以来の「均衡ある国土政策」が破綻したことが大きいだろう。
つまり、国に地方にばらまくお金がないので、「選択と集中」をして、頑張った地域だけが(補助金を得たりして)地域を活性化させ、生き残るという考え方ではないか。

もっとも、国が「審査して」決めるというやり方がそもそも正しいのかは議論としてありますし、現在検討されている補助金の「一括交付金化」は、こういった考え方とは間逆にありますし…

いずれにせよ、EUの補助金については、他にもいろいろ興味深いことがありそうなので、今後、いろいろ調べてみたいと思います。

全国知事会、全国市長会が事業仕分けの対象に?

共同通信 5/8】
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010050801000469.html

事業仕分け後半、知事会も対象に 枝野行政刷新担当相

 枝野幸男行政刷新担当相は8日、公益法人などを対象に行政刷新会議が20日から実施する事業仕分け第2弾後半日程で、全国知事会などの地方団体を取り上げる方針を固めた。知事会や全国市長会など地方6団体が総務省OBの天下り先になっているとの批判を重視、天下り根絶への強い姿勢を示すとともに、地方分権の障害になっていないかどうか実態を調べる必要があると判断した。

 この問題については、4月20日の刷新会議で前鳥取県知事の片山善博慶応大教授が「地方6団体の事務局は典型的な天下り団体だ。しっかりとメスを入れる必要がある」と指摘。枝野氏が「広い意味で行政刷新の視野に入れる」と応じていた。

 日程の都合もあり、仕分け対象は地方6団体のうち知事会を含む1、2団体となる見通しだ。

 ただ、地方6団体は地方自治法に基づく「全国的連合組織」で、公益法人などとは組織の在り方が異なる上、刷新会議内に天下り調査のため特定の組織を取り上げるのは、効率性などを検討する「事業仕分け」の手法になじまないとの意見があるため、具体的な議論の進め方は今後調整する。

2010/05/08 22:21 【共同通信

○とりあえず「地方6団体」って何?

Wikipediaより引用)

地方六団体(ちほうろくだんたい)とは、

地方公共団体の首長の連合組織である
全国知事会全国市長会全国町村会の執行3団体と、

地方議会の議長の連合組織である全国都道府県議会議長会全国市議会議長会全国町村議会議長会の議会3団体を合わせた6つの団体の総称。

法的には地方自治法第263条の3に、これら首長や議長が全国的な連合組織を作った場合、内閣総理大臣に届け出を行なうことや、地方自治に関する事項について総務大臣を通じて内閣に申し出を行なったり、国会に意見書を提出したりすることができると定められている。

ちなみに、全国市町村会じゃなくて、全国市長会全国町村会というように分かれているのは、戦前の「市制・町村制」の名残りです。近年は市町村合併もあいまって、内部的には合併も検討されています。もっとも、全国町村会はつい先日会長が汚職で逮捕されて、発言力が急速に低下していますが・・・

ちなみに、6団体とも、地方自治法に設置根拠がありますが、法人格はなく、「権利能力なき社団」です。


○どんな役割があるの?

ぶっちゃけ、昔は親睦団体だったそうです。

しかし、日本の行政は、国と自治体で役割分担して行われています。
例えば、公立の小中学校は、国が学習指導要領を定め、先生の給料は国が3分の1、都道府県が3分の2負担していて、学校の運営自体は市町村が行っています。
(これを、専門用語で「融合型」といいます。対照的に欧米は行政分野によって国・州・市町村が完結して行うので、「分離型」と言っています。)

このようなことから、費用負担や役割分担について、国と自治体との間で意見の相違や利害対立があったりするわけです。
そうした時に、自治体を代表して意見を述べるのが、地方6団体の役割です。
こうした「意見具申権」は地方自治法に規定されています(実際に通常の「要望」では「意見具申権」を行使することはほとんどありませんが)。
また、内政に関する重要事項(道州制地方交付税制度や、個別事務ではたとえば生活保護の制度設計など)について、事前に国と自治体の間で協議する「国と地方の協議の場に関する法律」が現在国会で審議されており、この法律では地方6団体の代表が協議のテーブルにつくことが定められています。


○地方6団体が総務省の「天下り団体」ってのはホント?

これは間違いありません。
全国市長会でいえば、事務方トップの事務総長、事務局次長がキャリアのポスト(事務局次長は「現役出向」)、行政部長(地方制度全般を所管)、財政部長(地方財政制度を所管)がノンキャリのポストになります。
ちなみに全国知事会の事務総長は事務次官経験者、全国市長会の事務総長は局長経験者です。この辺はポストによって、本省でどこまで偉くなったのかによって決められています。


○じゃあ、地方6団体は総務省の言いなりってこと?

そんなことはありません。
私の知る限り、事務総長といえどあくまで「事務方のトップ」であり、首長(特に会長)の言うことには逆らえません。
全国知事会であれば「全国知事会議」で決まったことが絶対です。
全国市長会の場合は809もの構成団体があるので、「全国市長会議」はシャンシャンの場ですが、その代わり、国への要望事項の内容は各市区→都道府県市長会→ブロック別市長会という形で、ボトムアップで決められていきます。
ただ、意見が食い違ったときの調整や、意見を聞く段取りは事務方で行うので、事務方主導に見えるんだと思います。
報道では橋下知事全国知事会天下り批判をしたということですが、全国知事会議で自分の意見が通らなかったことが気に入らなかったのではないでしょうか。

※一般的に、「官僚主導」というのは、政治家とマスコミが誇張している部分があります。仕事柄、霞ヶ関の人ともお話しする機会がありますが、基本的には、大臣の考えを忖度して、政策立案を行っていますし、それができるのが優秀な官僚とされています。だから、一見すると官僚が絵を描いているように見えますが、そこにはかなりの部分、大臣の「色」が出ています。これは、地方6団体でも同じです。

ちなみに、総務省とこの辺は経産省と財界との関係でよく議論されていることと似ています。よく言われることが、経産省は財界に対しては霞ヶ関代理人として振舞うが、霞ヶ関に対しては財界の代理人として振舞うという議論です。総務省自治体との関係も、おおむね似たようなものだと思います。


○「事業仕分け」って、無駄な事業を洗い出すためにやるんじゃなかったっけ?

事業仕分け」を開発したシンクタンク構想日本」ではこんな紹介がされています。

http://www.kosonippon.org/project/list.php?m_category_cd=16

事業仕分けとは?
・実施する自治体職員と「構想日本事業仕分けチーム」(他自治体の職員、民間、地方議員などで構成)が侃々諤々の議論をする
・国や自治体の行政サービスについて、予算事業一つひとつについて、そもそもその事業が必要どうかを議論
・必要だとすると、その事業をどこがやるか(官か民か、国か地方か)を議論
・最終的には多数決で「不要」「民間」「国」「都道府県」「市町村」に仕分け
・「外部の目」(特に他自治体職員。いわゆる「同業他者」)を入れる
・「公開の場」で議論する(広く案内し誰でも傍聴できる)
・「仕分け人」はボランティア(企業がコンサル業務を行うのではない)

どう強弁しても、「天下りの根絶」を狙い打ちにすることはできませんね。
この辺には事業仕分けが国民の支持を集めたことから、どんなことをしてもいいという、仕分けを担当する政治家の「驕り」を感じます。
天下りの問題について議論するなら、別のスキームを用意すべきでしょう。


自治体の共同組織について国が一方的に対象を選定していいの?

いいわけありません。
今回対象になると言われている「(財)自治体国際化協会」も自治体の協同組織ですが、こちらは石原知事、橋下知事を含めて、負担金が多すぎるというブーイングが相当出ていたので仕方ない部分はありますが、地方6団体については、各自治体の首長から強い疑問が出ていたわけではありません。橋下知事片山善博氏(慶応大学教授、元鳥取県知事)が批判していたくらいでしょうか。
あくまで国が自治体の「合意」なしに共同組織を事業仕分けの対象としたら、中央集権の謗りは免れません。2000年の分権改革で国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に代わったはずですが、これでは「上からの強権」そのものです。まして鳩山内閣は「地域主権」を「一丁目一番地」とずっと強調してきましたが、その方針とも矛盾するのではないでしょうか。


総務省天下りをやめたらどうするの?

これは非常に難しい問題です。その辺の天下り団体であれば、地方自治に精通した学識者やシンクタンク経験者でも勤まりますが(むしろその方が望ましい部分もある)、地方6団体の事務方トップの場合、地方自治に精通し、かつ利害調整に長けた人材が必要になります。もちろん、個々の自治体にはそういった能力を持った人材はいます。しかし特定の自治体の職員ないしはOBが事務方のトップになると、特定の自治体に有利になるように振舞うかもしれないという問題が出てきます。
また、地方6団体の事務方トップには政治的中立性が必要となります。実際のところ、今でも自治体のほとんどは保革相乗りであり、自民党金城湯池です。最近は政令指定都市都道府県で民主党が勝っていますが、地方自治体の首長もそういった政治的バックグラウンドを抱えています。
そうなると、党派性から「中立」な人材を選ぶ必要も出てきます。
そう考えると、総務省OBというのは消極的選択としては、アリなんじゃないかと思います。もしどうしても天下りをやめさせたいなら、上記の問題に対する対案を示すべきでしょう。


○で、結論は?

・「天下りの根絶」という目的だけでは、そもそも事業仕分けという手法になじまない。
・国が地方の共同団体を一方的に「仕分け」するのは、中央集権と言われても仕方がない。
・「国と地方の協議」が法制化されて発言力が増す地方6団体の事務方の人事に首を突っ込むのは自民党優位の地方6団体の現状に楔を打とうとしている疑いがある。

特に1番目と2番目は、地方6団体は首長の意向を踏まえた上で、早急に説明を求めるべきでしょう。